「知ってほしいんだ」(第十回きみまち恋文大賞)阪口亜矢
最初に好きになったのは手だった。シャーペンを回す手が好きになった。ちょっと骨っぽくて大きい手。授業中にするあんたのクセ。それをみるのがあたしの日課。あたしはそんなにヒマじゃない。だけどこれは、あたしの日課。
ある日、あんたと目があった。あたしはすぐに目をそらした。だって胃が痛かったから。キリキリ、キリキリと。でも、あとから気づいたこと。あの時、痛かったのは、胃じゃなかった。心臓だったのかも……と。
その晩、私は考えた。私は心臓の病気なのか? と。親にきいてみたけど、異常なし。イヌに相談してみたが、無反応。私は悩む。何かに悩む。いったいそれは何なのか?
悩みなんて数学になればいいのに、と私は思う。答えが一つ、はっきりしていればいいのに。そしたら、こんなに悩む必要ないのに。
「私はA型の神経質、すっきりしなくちゃイヤ!」なんて事はないけど、すっきりしたい楽天的なB型女子。
アハハハハッあたしの相談を笑う友。なぜ笑うのか私には分からない。友は言う。「好きなんじゃない?」と。好きなのか?? 予想外の答え、私はまた思う。「好き」とは、簡単なように見えるが案外むずかしい。そう思った。
「むずかしい」けど、やってみる価値はある。がんばってみる価値はある。意味がないわけがない。自分にできた初めての感情を、押さえるわけにはいかない。
そして、あたしは手紙を書く。あんた宛の手紙を書く。思ったままに書いている。期待をしているわけじゃない。いい結果を期待しているわけじゃない。だけど知ってほしいんだ。あたしの「好き」っていう気持ちを。
posted on 2006-10-22 19:24
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