明けやすい夜を詠んで、昔の歌人は風流だった。〈夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月宿るらむ〉と百人一首にある。「まだ宵と思っていたら明けた」とは大げさだが、時計のない時代である。実際にそう感じたのかも

▼夜が短ければ、そのぶん昼間は長い。貴族は知らず、庶民はこの季節、よく働いただろう。「五月には心無しに雇われるな」と言うそうだ。日没が遅くなれば長く働かされる。あこぎにこき使われてはかなわない。雇われる側の用心が、短い言葉にこもる

▼同じ警戒感が、サマータイム(夏時間)の導入論議にある。時計の針を1時間進めるから、日没は1時間遅くなる。そうなれば「あこぎ」が増幅しかねない。日が高いのに「お先に」とはいかない空気が、残業を強いる心配もある

▼その夏時間を導入する法案を、超党派の議員連が今国会に提出するそうだ。2年後から導入の可能性もある、と聞けば無関心ではいられない。省エネ、夕刻の余暇利用といった利点が見込まれる半面、時間変更による混乱や労働強化などの不安も多い

▼とはいえ今の季節、朝の5時には十分に明るい。なのに世の中は、まだ眠りから覚めていない。浪費するには惜しい「天然の照明」ではあろう。真夏ならこれに「天然の冷房」も付く

▼3年前の本社の世論調査では、導入への賛否はきれいに二分されていた。あれこれ味を想像するだけでなく、一度食べてみて判断する手はないかと思う。「心無しに雇われない」準備を、整えたうえのことではあろうが。




posted on 2008-05-24 09:20 楚亜&飒 阅读(37) 评论(0)  编辑  收藏 所属分类: 天声人語--泛读 网摘收藏

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