新出的工房~~对小西有爱的说~~于是趁国庆放假闲着没事就听写了下来~~~ a14;6; w4;c ra
文中有三处红色的是不确定的地方。。。大家帮忙听听看~~~
沪江ID ilyevy 和 jpdrama 帮忙听出了第1处
jpdrama还听出了第2处,
感谢两位~~^^
第3处我没听错~~
文档版的我还没改过来,因为只有两处,大家自行修改一下吧~
7;w,15;l
注:10月25再更新:特别感谢沪江朋友jpdrama的仔细校对~~之前听写的文中有四处错误,现在改过来,用绿色表示。
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(文中的试听是128k的。。我打包上传了192k的。。追求音质的可以去下哦~^^)
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(保留期一个月,请尽快下载!)
オリジナル朗読 CD シリーズ
続 ふしぎ工房症候群 EPISODE.2 「もう誰も愛せない」
語り:小西克幸
01. prologue
日常で起こる些細で不可思議な出来事、それが人の思考と行動に影響を与えていく、過程と結末を知りたいとは思いませんか?この物語はあなた自身の好奇心と願望に基づいて構成されています。ともすれば見落としてしまいがちのいつもの風景の中に、あなたが不思議工房を見つけることができるように、お手伝いしましょう。
02. 失恋 ( 23:35—23:42 )
失恋した。結婚まで考えていた人と。
ぼく が悪いのか、彼女が悪いのか。
やっぱりぼくが悪いのだろう。
そう思わなければ、前に進めなくなる。
彼女に責任を被せてしまったら、その彼女を選んだ自分を否定することになる。
そうなったら、もう誰も愛せなくなるかもしれない。
ほんの些細な行き違いが、徐々に傷口を広げていったように思う。
勿論、育った環境が違うから価値観も違う。でも、それも少しずつ埋めていけると思っていた。
恋愛ってこんなに苦しいものなのか。だったらもう恋なんかしたくない。
今のぼくはそんな気持ちでいっぱいだ。
一人で生きていく方がよっぽど楽だ。そう思い始めている。
それでも、やっぱり一人でいる孤独感に耐えられなくなる時がある。
人間は一人では生きられない。それもわかっている。
でも、でも、ぼくはもう傷つきたくないし、もう誰も傷つけたくないんだ。
03. 歯車 ( 23:46 — 0:12 )
付き合ったばかりの頃は楽しかった、世の中全てがバラ色で幸せに満ちていた。
この先には、もっと素晴らしい未来があると信じていた。
彼女とは仕事の関係で知り合った。それまで女性と付き合った経験のないぼくは有頂天になった。
初めてのデート、そして自然に交わしたキスは、ほんのりと甘い香りがした。
何度かデートを重ねてから、彼女の家に招かれて味わった手料理は、もう最高だった。
一夜を過ごし、朝、ぼくの腕の中で眠る彼女を見て、ぼくはこのままずっと一緒にいたいと、心の中で呟いた。
デートは大概喫茶店で世間話をした後、映画を見に行き、それから食事といったお決まりのコースだったが、それだけで十分に楽しかった。
彼女の家で一緒にテレビや DVD を見るのも、とても幸せな一時だった。
お互いに結婚を口に出すようになったのも、それから間もなくのことだった。
ぼくたちの話も、将来を真剣に考える内容に変わっていった。
彼女も仕事を持って自立しているし、ぼくも負けないように頑張ろうと思った。
お互いに励まし、支えあいながら生きていこうとも話し合った。
ぼくたちは全てにおいて真剣に愛し合っていた。
しかし、いつしか知らぬ間に歯車が噛み合わなくなっていることに気付いた。
お互いに仕事で忙しかったこともあり、デートの回数が減ってきた頃のことだった。
どちらが悪いわけでもないし、決して疑うつもりもなかったが、仕事を口実に距離を置き始めている、と考えるようになったのは、ぼくの方だけではなかったように思う。
本当に些細なことで喧嘩をしたことがある。食事のマナーだったり、言葉遣いだったり、いままで自分が気付かなかったことを指摘し合うだけで、気まずくなったことがある。悪気のない言葉に始まって口論になったこともある。
始めの頃はすぐに仲直りすることができた。
でも、お互いに遠慮がなくなってくると、尾を引きずることが多くなった。
こんな話どこにでもある。これくらい乗り越えていかなくてどうする。ぼくは自分に一生懸命言い聞かせた。
彼女も同じ思いのはずだ。お互いにもっと努力しなきゃいけない。むしろ、ぼくの努力の方がまだまだ足らないんだ。
そう頭の中ではわかっているつもりだった。
でも、つい言葉と行動が逆の方を向いてしまう。焦れば焦るほど歯車が狂っていく。いらいらが募っていく。
なぜ、どうしてなんだ。
04. 所詮( 0:17-0:44 )
ある日のこと。ぼくたちは久しぶりに会って、喫茶店で話をしていた。
切り出したのは、彼女の方だった。
わたしたち、あまり合えないのね、と
ぼくはとっさに自分が責められているように感じてしまった。
確かにぼくも忙しいけど、きみだって仕事に追われているじゃないか。
違う、そんなことを言っても仕方がない。もっとお互いに時間を作れるように努力しようって言わなきゃ駄目だ。
そう頭の中で考えた時には、わたしに会おうとしないのはあなたの方よ、という彼女の言葉が返ってきた。
そんなことないよ。どうしてそういう言い方するの?ぼくはいつだってきみに会いたいと思っているのに。。
それは本心だった。でも、心の裏側では、ぼくに会おうとしないのはきみの方だ、という気持ちが強く働いていた。
それは当然彼女にも伝わった。
わたしのせいだって言いたいの?
彼女の苛立つ声を聞いて、ぼくはついかっとなった。
何だよ。。そんなこと言ってないだろ?もっとぼくのことを理解してくれだっていいんじゃないか?
売り言葉に買い言葉だった。
わたしのことも理解してくれてないじゃない?
彼女はそう言って下を向き、大粒の涙を零しはじめた。
ぼくは言葉に詰まった。確かにそうだ。ぼくは彼女のことを理解していない。でも彼女だってぼくのことを全然理解してくれてない。
考えれば考えるほどに詰まっていく。ふと、ある言葉が浮かった。
所詮、他人同士じゃないか。
考え始めたら止まらなくなった。彼女と出会ってからまだ一年足らずだ。そんな僅かな期間にお互いの何がわかる?わかったのは、考え方の違いや思考の違い。相手を思う気持ちより、自分を優先する気持ちの方が勝っているということだ。お互いの我がままにたって、もう目を瞑ることができなくなっているということだ。
理解し合うなんてできっこない。長年一緒に暮らしてきた家族とは違うんだから。。
家族じゃなければ、ぼくの気持ちなんか分からない。
彼女の顔色が変わった。それもそのはずだ。だって、これから家族になるはずの彼女に向かって、きみは家族じゃないから、と言って退けたのも同然だから。
一瞬後悔したが、ぼくにはもう、それ以上何も言うことができなかった。ごめん、の一言がどうしても出てこない。
ぼくたちはずっと座ったまま黙り続けた。何時間もそうやっていたような気がする。長く重苦しい時間だけが過ぎていく。
ふいに彼女が席を立ち、ぼくに背を向けて出口に向かった。
あっ、突然だったから、ぼくも慌てて後を追おうとした。
その時、来ないで、と彼女は言った。
ぼくは立ったまま彼女の後ろ姿を見つめた。動けなかった。いや、動こうとしない自分がいた。心のどこかで、もういいという気持ちが働いた。
所詮ぼくたちは家族になれない。そんな考えが頭の中を支配し、ぼくをその場に釘付けにした。
05. 愛って何( 0:47-1:10 )
あの時、本当は、彼女は僕に追ってきてほしかったのだろうか。
数日経ってからも、ぼくはぼんやりとそのことばかり考えていた。何度か彼女に電話をした。しかし、お互いによそよそしいだけでなく、もう話が噛み合うことはなかった。
いつしか電話を掛けることに躊躇いを感じるようになり、しばらくはメールのやり取りもしたが、それもぎこちなくなっていくだけだった。
メールの上でも喧嘩になった。しまいには彼女から、あなただけが男じゃないから、という言葉が届いた。
結局はぼくの方から、もう別れよう、と切り出すことになった。
ぼくだけが男じゃない、そりゃそうだよな。
ぼくは苦笑いしながら携帯を折りたたみ、ポケットに突っ込んだ。俯いたら、涙が出てきた。
彼女とのやり取りは、それが最後となった。
彼女を傷つけてしまった。そしてその分、ぼくも傷ついた。
楽しかった頃の思い出ばかりが蘇てくる。逆に、もっとしてあげられることがあったんじゃないか、という後悔の念に苛まれる。
もしぼくに会っていなかったら、彼女には、もっと相応しい恋人ができていたかもしれない。こんな傷つけあうこともなかったかもしれない。
その反面、恋愛に対する懐疑心がぼくを苦しめる。
愛って何だろう。愛することにどんな意味があるんだろう。子孫を残すための本能だけで行動する動物に比べ、人間ってやつは、なぜこんなにも悩み、苦しむのだろう。
今度は悔しい気持ちが込みあげてきた。
ぼくだって頑張ってきたのに。。彼女のためにと思って一生懸命だったのに。。なのに。。なぜこんな結果になるの?なぜこんな思いをしなくちゃならないのか?
考えれば考えるほどに胸が締め付けられる。
だったら、別に彼女がいなくたっていい。結婚なんかしなくたっていい。一生独身で気ままに暮らしていけばそれでいいじゃないか。そうすれば、もう誰も傷つけなくてすむし、自分も傷つかなくてすむ。
そう自分に言い聞かせることによって 、なんとか平常心を保とうとした。時間が解決してくれることを願いながら、そして、恋愛に対して完全に臆病になっている自分がいた。
06. 恋愛の資格( 1:23-1:35 )
それから、二年もの歳月が流れた。仕事に没頭する毎日と趣味に興じる生活スタイルの中で、少しずつ心の傷も癒え、平穏な日々を送っていた。
時々彼女のことを思い出す。ぼくよりもっと素敵な恋人を見つけて、幸せになっていてほしい。心底そう思う。
恋愛に関しては、ぼくは本当に駄目な人間だから。
社内で後輩の女の子から告白を受けたことがある。なにかにつけぼくに気を使ってくれる。とても性格のいい子で、異性としても決して嫌いなタイプじゃなかったが、ぼくは申し訳なさそうに頭を下げるしかなかった。
ごめんね、ぼくは恋愛する資格のない人間なんだ。
後輩はえっと言ったきり、もじもじしながらずっと下を向いていた。
断りの言葉にしては意味不明に思われてるに違いない。しかし、今のぼくには他に適当な言葉がなかった。困ったぼくは、思いついたように言った。
そうだ、ぼくなんかよりずっといいやつが社内にいるじゃないか。今度紹介してあげるから。
運良く上司からの呼び出しを受けて、ぼくは体よくその場を離れた。後輩の女の子が俯いたまま立っている姿を尻目に、ぼくは足早に立ち去った。
これでいい、ぼくに恋愛感情を持ってくれるのは有難いが、今のぼくにはそれを受け入れる自信がまったくない。だからこれでいいんだ。
そう自分に言い聞かせたが、逃げ場をいつも求めている臆病な自分にちょっと苦笑いした。
07. 運命( 1:37-2:07 )
そんなある日、仕事の同僚に合コンに誘われた。ぼくはすぐさま断った。
ごめん、僕はそういうのが苦手だから。
同僚は困ったように言った。
頼むよ、どうしても一人足りないんだ。相手の中に気になる女性がいて、どうしてもその人に会いたいんだ。俺たち仲間だろう?だから頼む、なぁ?
拝み倒すように頭を下げる同僚を前に、僕は渋々承諾した。仲間とか言われたら仕方がない。なに、ただの飲み会だと思えばいい、一次会が終わったら、さっさと帰ればいい。今回は人助けだと思えばいいんだし。
同僚に連れられて行ったお洒落なイタリアンレストランに、もうメンバーは集合していた。ほとんどが知らない人だっただけに、最初は緊張もしたが、徐々に打ち溶け合って、場は盛り上がっていった。
僕にとっても、合コンは初めての経験だったし、まあ、これもありかな、と思い始めた頃、僕にずっと視線を向ける女性の存在に気付いた。
かなりの美人だったし、僕も悪い気はしなかったが、席が離れていたため、碌に話もできなかったから、さほど気にも留めていなかった。
しばらくして、同僚が席替えしようと言い出し、彼女が僕の前に座ることになった。
初めはちょっとぎこちなかったが、話をするうちに趣味のことや、ものの考え方について意気投合するようになり、しまいには僕たちは他の人そっちのけて、大いに盛り上がった。
そうこうするうちにお開きの時間になり、レストランを出た後は、めいめい解散することになった。カップルになった者、結局相手ができなかった者とに別れ、後は自由行動となった時、僕の隣に彼女はいた。
僕の手をしっかり握っている。僕も強く握り返した。そしてそのまま夜の街へと消え、一夜を共にした。
ほとんど一目ぼれだった。
あれほどまでに臆病だった自分が、信じられなかった。きっと運命の出会いだったんだ。そう考えるほかない。世の中にもそんな話はいくらでもある。勿論、自分にそんなことが起こるなんて、夢にも思わなかったが。
僕はそう考えると同時に、二度とあの過ちを繰り返してはいけないと、心にかたく誓った。
そのためにどうすればいいかなんて、まるで見当はつかなかったが、そんな思いさえ、僕に忘れさせるほど、彼女は魅力的だった。
僕は彼女に夢中になった。いつ何時でも一緒にいたい。できれば、すぐにでも一緒に暮らしたい。そんな思いもあって、僕はできるだけ、彼女と一緒に過ごす時間も作ることに懸命になった。彼女もそれを望んでいた。
彼女の愛情はとても純粋に思えた。何があっても一生僕のそばにいる。逃げなければならないことが起きたら、一緒にどこへでもついていく。たとえ僕が犯罪を犯して収監されても、ずっと待っている。
表現の仕方は極端だったが、僕はその言葉に胸を打たれ、本当の理解者が現れたとさえ思った。
確かに仕事は忙しい、でもいくらだって都合をつけられるようにすればいい。休みを取る分、もっと時間を有効に使って働けばいい。そして、彼女が望むことなら、何でもしてあげよう。前の彼女にしてあげられなかったことを、今の彼女にしてあげることで、償おう。
僕の頭の中は、彼女のことでいっぱいになった。
08. 破局( 10:26-10:39 )
しかし、それが間違いだったことに気付くのに、それほど時間はかからなかった。
お互いにあまりにも冷静さをかえていた。あまりにも夢を語りすぎて、現実から遠ざかっていったのである。
歯車はすぐにも狂い始めた。そして、突然止まった。
またしても破局が訪れようとしていた。
ある日、僕がふと現実と価値観の問題を口に出した時、恐らくだが、彼女は一瞬にして、夢から覚めてしまったのかもしれない。
わたしが子供だからいけないのね、と彼女は言った。
ぼくはあえてそれを否定しなかった。なぜなら、このままずっと夢を見続けられるはずがない、というぼくの現実的な考え方が警告を発していたからだった。
そして、今度ゆっくり話し合う必要があるといったぼくの言葉が、急速に彼女を遠ざけてしまった。
それまで、会えない日でも、毎日交わしていたメールの内容はおざなりになり、会って話がしたいというぼくのメールに、彼女は時間がほしいと答えてきた。
話し合う前に時間がほしいというのはどういう意味だ。話し合ってからの方が、時間が必要になるんじゃないのか。
一方的と感じた彼女のメールに、ぼくは、それはお互いに時間が必要になったということなのかな、と返した。
ぼくの精一杯の抵抗だった。このままでは、話し合う前にぼくたちは駄目になる。そういう意味を込めたぼくなりの警告を発したつもりだった。
しかし、それ以来、彼女のメールはぷっつりと止んだ。
09. 限界( 11:25-11:45 )
その直後だった。ぼくは過労で倒れた。
朝になって気付くと、全身びっしょりと汗をかき、高熱に目が眩み、起き上がることすらできない。まったく体の自由がきかなくなっていた。
会社に電話を掛けようにも受話器に手が届かない、どうすればいいか考える間もなく、そのまま気を失った。
気付いたらもう夜になっていた。体の状態はまるで変わっていない。
あまりの苦しさに、このままでは死ぬのではないかとさえ思った。ぼくは震える手で携帯電話を探りあて、彼女の電話番号を押した。
助けてほしい一心だった。コール音が長く続く。
早く出てくれ、と祈っているうちに、留守番電話に切り替わった。
ぼくは声を振り絞った。
ぼく。。だけど。。倒れて、動けなくなっちゃって。。でも、きみの声だけでも、聞きたいと思ったから。。
それだけ言うのが精一杯だった。心のどこかに、彼女が来てくれるという思いがあった。
きっと助けてくれるという期待があった。
しかし、どれだけ待っても電話がかかってくる様子がない。留守番電話に切り替わったのは、ぼくの電話に出たくなかったからなのか、という思いがよぎる。
しばらくして、一通のメールが届いた。その内容は一瞬でぼくを落胆させた。
大丈夫ですか、早く治るように、心から祈っています、と。
ぼくはすぐさまメールを返した。具合がよくなったら、本当にきみとちゃんと話がしたいと思っているんだ。
それに対する返信はなかった。ぼくは絶望した。そして、たとえこの体がどうなろうとも、彼女の元へ行かなければならないと思った。
行ってどうなるものでもないことはわかっていた。でも、このままでは、二度と彼女に会えなくなる、二度と人を愛せなくなってしまう。
ぼくの心は体以上に悲鳴を上げていた。
やっとの思いで家を出たものの、歩くことさえままならない。タクシーを捕まえようとしても、なかなか来ない。そればかりか、やっと来たと思っても、ぼくの様子を見て不審に思ったのか。目の前を無情に走り去っていく。
もう、どこをどう歩いているかわからない。道路脇の塀に齧りつき、伝うように歩いていたが、もう限界だった。
ぼくはそのまま意識を失った。
10. ふしぎ工房( 11:50-12:07 )
そのくらい時間が経ったのか、うっすら目を開けると、薄暗い倉庫の中に横たわっている自分に気付いた。
ふいに、大丈夫?という明らかに幼い少女の声が聞こえた。
顔を持ち上げると、女の子がぼくをきょとんとした顔で覗き込んでいるのが見えた。
ここは。。どこ?
少女は、不思議工房よ、と答えた。
ぼくは。。なぜここに?
不思議工房と聞いても、ピンと来ない。それより、どうして自分がここにいるのかが知りたかった。
しかし少女はそれには答えずに、ここはね、幸せを売っているお店、わたしはお留守番してるの、と言った。
幸せって。。
熱にうかされぼんやりした頭では、もうそれ以上聞き様がない。かすんだ目では少女の顔形さえはっきりしない。お遊びなのか真面目なのか、それすら判断できない。
ぼんやりしていると、少女がまた言った。
あなたも幸せを買いに来たんでしょう、と。
それを聞いて、とたんに涙が溢れた。このどうにもならない状況で、心までもだえ苦しんでいるぼくにとっては、とてつもなく、大きな意味のある言葉だった。
幸せに。。なりたい。。ぼくは嗚咽を上げながら呟いた。
すると少女は、大人のくせに泣いちゃ駄目よ、と言いながら、紙と鉛筆を差し出した。ここに願いを書くという。
これはきっと夢なんだな、と思った。だったら、少女の指示に素直に従おうと思った。
差し出された注文書と書かれた紙に、ぼくは幸せになりたい、と震える手で書いた。
少女はそれを受け取ると、お代は後払いの成功報酬ね、と言ってにこりと笑った。
そのぼんやりとしか見えない笑顔を見ながら、ぼくは再び気を失った。
11. 恋愛に向いてない…( 12:31-13:02 )
鳥の声で目が覚めた。はっとして周りを見渡すと、そこは自分の部屋だった。
いつの間に。。帰ってきたんだろう。
ボーとした頭で考えていると、大丈夫ですか、という女性の声が聞こえて驚いた。
声のする方に頭を持ち上げると、会社の後輩の女の子がエプロン姿で立っていて、二度と驚いた。
彼女はぼくのそばに腰を下ろすと、これまでのいきさつを語ってくれた。
ぼくが会社を無断欠勤したこと、何度連絡を入れても電話に出ないこと、心配になって上司に相談し、自宅まで様子を見に来たこと、部屋の鍵はあいたままで、中でぼくが倒れていたこと、びっくりして救急車を呼び、病院に運んだこと、一昼夜点滴を受け、昨晩家にタクシーで連れ帰ってきたこと。
そうなのか。。するとぼくは二日間も意識がなかったことになる。一昨日の晩、家を飛び出したことや、少女に出会ったことも、夢にすぎなかったのか。
そんなことを考えていたら、彼女のすみませんという声が聞こえた。
えっ?ぼくが不思議そうな顔をすると、彼女は少し恐縮した面持ちで、病院に行く時に替えの下着を持ち出したことや、戻ってきてからも、勝手に掃除や洗濯をしていたことについてぼくに謝った。
そんなこと。。むしろ、ぼくの命の恩人じゃないか。
そう言ってあげると、彼女も安心した顔になり、よかったと顔を綻ばせた。そして、ちょっと持っててくださいと言って台所に立つと、 お粥と付き合わせを運んできた。ぼくが寝ている間に用意したらしい。
あ、ありがとう。。
考えてみたら、彼女はこの二日間ぼくにつきっきりだったわけで、それだけでも十分大変だったろうと思う。碌に寝てないに違いない。感謝の気持ちでいっぱいになった。
後片付けを済ませると、彼女は、これから出社しますけど、お昼の分も用意してありますので、レンジで温めて、ちゃんと食べてくださいね、と言って帰り支度を始めた。
帰りには、夕飯の支度をしに、また寄っていいですか、とぼくに聞いた。
あっ。。うん。。頼んでもいいのかな 。
彼女は、はい、と元気な返事をして出ていった。
本当にいい子だと思った。
お昼になって、用意してもらった昼食を食べてから、ちょっと散歩してこようという気になった。体の調子ももう大分いい。少し外の空気にあたりたくなった。
しばらく歩いてから、近くの公園のベンチに腰掛け、ボーと空を見上げた。よく晴れ渡ったいい天気だった。
これまでのことを少し考えてみる。あの晩、彼女に電話を掛けたことは果たしてよかったのだろうか。それ以前に、ぼくたちの関係はもう終わっていることはわかっていたはずだ。でも、病気で苦しんでる中、もしかしたらという淡い期待があっても当然じゃないか。彼女が来てくれさえすれば、きっとぼくたちは、やり直せたと思う。
いや、そう考えるのは止そう。それでは彼女を責めることになる。そこまで彼女を追い込んだのは、きっとぼくなのだから。
やっぱり、ぼくは恋愛には向いてないのかもしれない。二度経験すれば自ずとわかる。
もう誰かを愛することはやめよう。傷つき、傷つけあう関係はこれでお仕舞いにしよう。もう大分疲れてしまった。
それでも、彼女たちには幸せになってほしいと思う。この先不幸な人生を歩もうなら、その責任の一端は、ぼくにあることになるかもしれない。
それだけは、なってほしくない。
12. 老夫婦( 13:35-13:53 )
ツーと涙が頬を伝った、ぼくは思わず顔を両手で覆い、下を向いて塞ぎこんでしまった。
すると、頭の上から声が聞こえた。
どうかしましたか?
ふと顔を上げると、そこに見知らぬ老夫婦らしき人の姿があった。心配そうにぼくの顔を覗き込んでいる。
あ、いえ、なんでもありません。
随分お顔の色が悪いようだが。。
夫と思われる老人がなおも心配そうにぼくを見ている。
だ、大丈夫です。ちょっと目まいがしたものだから。すみません、心配をおかけして。。
そう。。ならいいんだが。。若い者は無理をしがちだからな、気をつけなさいよ。
えっ?無理という言葉を聞いて、何か胸に込みあげてくるものを感じた。この時、初めて目の前の老夫婦の姿をまじまじと見た。
ぼくのことを心配しながらも、二人の表情は非常に穏やかで、幸せを感じさせるものだった。仲良く手を繋ぎ、お互いを支えあうようにして立っているその姿も、ぼくにはとても眩しく感じられた。
どうしたら、あんなふうに生きていけるんだろう。どうしたら、あんな幸せそうな顔ができるんだろう。
ぼくの視線に気付いた老人が不思議そうな顔をした。わたしたちに何か?
ぼくは慌てて打ち消すように言った。
い、いえ、すみません。あんまり仲がよさそうだったから、つい。。
老夫婦は顔を見合わせて、笑みを浮かべた。
そんなに仲がよさそうに見えたかね。
あ。。はい。。どうしたらそんなふうになれるのかなって。。
老人はにっこりして言った。わたしたちはね、お互いを必要としているから、こうやってずっと一緒にいるんだよ。
そう言ってから、老夫婦は、体に気をつけなさいよ、とまた言い残し、その場を去っていった。
人生はゆっくりと歩いていくもんだよ、とでも言いたげな物静かの足取りだった。
その後姿を見送りながら、ぼくは漠然と老人の言葉について考えていた。
無理をしない。。お互いを必要としている。。
ぼくにはその言葉の持つ意味がはっきりとわかったわけではなかったが、心が安らぐ、そんな印象を受ける言葉だった。
13. あるがままに( 13:55-14:14 )
喉が渇いたな。。病みあがりの散歩に少し疲労感を覚えた。部屋に戻ってからのぼくは、喉を潤すためコップを手に取った。
コップは二つあった。別れた彼女がお揃いで買ってきてくれたガラスのお洒落なコップだった。その一つに冷蔵庫から取り出した水をボーとしながら注いでいたら、うっかり溢れてしまった。
慌ててコップを掴むと手が滑り、今度はゆかに落ちて、かしゃんと音を立てて、割れてしまった。
あっ!ぼくは呆然と割れたコップを見つめた。ゆかには水が広がっている。戸棚にあるもう一つのコップに目をやると、なんだかやるせない気持ちでいっぱいになった。
一つ残された空のコップが、悲しそうに、割れたコップを見つめているように思えて仕方なかった。
ふと、老人の言葉を思い起こした。
無理をしてはいけない。コップに注いだ水はぼくの愛、注ぎすぎた愛が溢れ、受け手のコップが壊れてしまった。
こじつけのような気持ちだが、今のぼくには十分納得できる光景だった。
そうだ。。今までぼくは愛そうと一生懸命努力することが、恋愛の形だと思いこんでいた。
実はそうじゃなかった。本音は、もっと愛されたかったんじゃないのか。それを素直に出すことの方が大切だったとは言えないか。傷つき、傷つけ合って、もう誰も愛せないと考えることは間違いだ。たとえ傷つけあうことになろうとも、愛されたいと思う気持ちが相手を慈しみ、それが帰ってくることになる。それが、お互いを必要としていく家庭に繋がっていく。お互いを必要としているからこそ愛するし、愛される。そしてその愛は無理せずゆっくりと、本当の意味の家族へと形を変えていく。だからこそ、愛は永遠に続く。
妙に納得している自分がいた。
この考え方が正しいとは限らない。でも、ぼくはあの老夫婦のような人生を歩んでいきたい。
無理せず、ゆっくりと自然に、そして、あるがままに。あるがままというのは、本当の自分の気持ちだと思う。あるがままの自分を受け入れる。そしてもっと素直になる。それが今のぼくにとって、もっとも必要なことなのかもしれない。
14. epilogue ( 14:21-14:38 )
ぼくは割れたコップを片付けてから、ゆっくりとソファーに腰掛けた。
すると、テーブルの上のある白い封筒が目に止まった。
さっき帰ってきた時に、ポストから取り出した郵便物に混じっていたものだ。
気になって手に取ると、表書きに請求書と書かれてある。差出人は不思議工房となっていた。
不思議工房。。?
はっとして封を切り、中身を取り出すと、そこには次のような文言を記した紙が一枚入っていた。
あなたの幸せをお届けします。愛することを信じなさい、愛されることに素直になりなさい。そして、愛を見つけたら分かち合いなさい。それを生涯に渡る代償としてご請求申し上げます。不思議工房。
ふいにあの少女の姿を思い浮かんだ。お代は後払いの成功報酬ね、と言った言葉も思い出す。
あれは。。夢じゃなかったのか。。
呆然としていると、ピンポンとドアベルの音が鳴った。
慌てて出ると、そこには後輩の彼女の姿があった。
また来ちゃいました、と言って俯き加減にもじもじしている。手にはスーパーの袋を抱えている。夕飯の支度に来てくれたのはすぐにわかった。
あ、ああ、よく来てくれたね。ごめんね、ぼくのために何度も足を運ばせて。。
後輩は、いえ、いいんです、わたしが勝手にしていることだから、気にしないでください。と顔を赤らめながら言った。
ぼくはふっと笑みを零した。うん、じゃ、お願いします。
後輩は、今度ははいと元気よく返事して、お邪魔しますと頭を下げた。
彼女を招きいれ、ソファーに座って、彼女の夕飯の支度をする後ろ姿を見ながら、ふと考えた。
もう一度愛することを一から始めよう。結果を気にすることより、もっと自分に素直になろう。本当の意味でお互いを必要とする関係をゆっくりと築いていこう。あの老夫婦のように。
ふいに後輩の彼女が振り返って言った。
先輩、あまり無理しないでくださいね、と。
うん、これからはそうするよ。自分でも驚くほど素直な声だった。
(聞き取り : 4 時間 22 分 )
posted on 2007-09-30 17:49
滄炎沁夢 阅读(2142)
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