【JLPT1 】2006~2002真题-阅读部分 2006-Ⅸ-①
問題 Ⅰ 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4 から最も適当なものを一つ選びなさい。
小説が人間の生きる現実の上に成リ立つものである以上、その生と死を絶対的に縛る<時間>から解き放たれることはあり得ない。というよリ、より広大な、より豊潤な<空間>に向けて飛び立ち、漂い出すことを夢みながら、常に腰につけた<時間>の皮肉な命綱によってその世界を守られ、限られ、狭められているのが、小説なるものの運命なのではあるまいか。 ( 中略 )
小説がそのように<時間>に固く結ぴつけられているとはいっても、小説の中で生きて動いているのは日めくりカレンダーや柱時計ではなく、登場人物としての人間達である。 ( 注 1) もとより、現実生活においても<時間>が見えるわけではない。見えない<時間>をなんとか目に映るものにしようと努力して、人間は暦や時計を生んで来たのだろう。 ( ① ) 、小説の中で時の ( 注 2) 推移を見えるものとするのは、暦や時計それ自身ではなく、溜息をつきながら暦をめくり、不安げな表情で壁の時計を見あげる、あれこれの人物達に他ならない。 ( 注 3) 極言すれば、ここでは人間そのものが、ある意味では暦であり時計であるともいえる。とはいっても、人間を単なる<時間>の ( 注 4) 函数として考えようとするのではない。むしろ、 ② 人間の存在とは、そのままごく自然に<時間>の表現でもある という一事を述べたかったに過ぎない。
たとえば、こんなことがあるだろう。--- 1 軒の家で暮す一つの家族を描く時、幼い子供達がいる。その父親ヒ母親がいる。この親子は時間の ( 注 5) 連鎖の中で生れて来たものである。つまリ、父親となる男性と母観となる女性がいたから、は じ めて子供達が生れて来たわけである。よくいわれるところの核家族とはこの 2 世代によって構成される家族のことだ。そこでは、いわば ③ 原因と結果が最短距離で向き合い、最小単位の家族を構成しているといえる。
その家族に、更に上の世代、祖父なり祖母なりが加わるとする。 ④ 3 世代の家族が生れると、これは核家族とは微妙な違いを見せることになる。親と子の関係は二重のものとなり、単純な原因 ・ 結果の環によって祖父母と孫達とをつなげるのはむずかしい。つまり、核家族 ( 注 6) に比してこちらでは親と子の関係が相対化してくる。ある家族にとって必ずしも必要なものとはいえないこの年寄りの存在は、しかし一方では ( 注 7) 当の家族にとってまさに<時間>そのものに他ならぬともいえるのではないか。親と子がただ二つの世代で向き合っていた際にはあまりに原因 ・ 結果の結びつきが直接的であったためによく見えなかった<時間>の姿が、祖父母を加えることによって俄かに立体的なものとして浮かび上って来るということはないだろうか。
年寄り達は、( ⑤ ) という事実を示すことによって時の不思議な影を孫達に ( 注 8) 垣間見せるとともに、自らの古さを通してもそこに降り積んだ時の ( 注 9) 堆積を家族の目の前 ( 注 10) に晒さずにはいまい。つまり、<時間>は逃げようもない血のつながりを素材として家族の中にそ ( 注 11) の本性を現したわけである。 ( 黒井千次「家族 . 家屋 . 時間」『日本の名随筆 83 家』による )
( 注 1) もとより:いうまでもなくわしい
( 注 2) 推移:移り変わること
( 注 3) 極言すれば:極端な言い方とすれば
( 注 4) 推移:函数(通常「関数」と書く):ある数 a の変化によって、他の数 b が変化する時、 b は a の関数であるという
( 注 5) 連鎖:鎖のようなつながり
( 注 6) ~に比して:~に比べて
( 注 7) 当の~:まさにその~
( 注 8) 垣間見せる:ちょっと見せる
( 注 9) 堆積 : 積み重なったもの
( 注 10) 晒す : 隠すところなく見せる
( 注 11) 本性 : 本来の性質
問( 1 ) この文章は、小説家である筆者が「時間」について書いたものである。筆者は人間が何のために暦や時計を作ったと言っている
1.人間を単なる時間の函数であることから救済するため
2.現実には見ることの不可能な時間を視覚化するため
3.小説の世界の時間の推移をわかりやすく見せるため
4.生死を絶対的に縛る時間から人間を解放するため
問( 2 ) ( ① ) に入る最も適当な言葉はどれか。
1.けれど 2.だから 3 .その上 4.つまり
問( 3 ) ② 「人間の存在とは、そのままごく自然に<時間>の表現でもある」とあるが、それはどのようなことか。
1.時間を表現しようとすると、時計を見るなどの人間の動作を描くことになるということ。
2.人間は、自らを縛る時間を意識すると、溜息をついたり不安になったりするということ
3.人間が暦や時計を作ったかちこそ、時間を視覚的に表現できるようになったということ
4.人間の行うすべての営みは、意図せずに時間の存在を感じさせるものであるということ
問( 4 ) ③ 「原因と結果」とあるが、それは何と何のことか。
1.核家族と 2 世代2.父親と母親3.男性と女性4.親と子供
問( 5 ) ④ 「 3 世代の家族が生れる 」とあるが、そのことによってどのような二とがわかってくると筆者は言っているか。
1.子供には年寄りとの良好な人間関係を作ることがむずかしいということ
2.第三者が入ると、親と子供が直接向き合えなくなるということ
3.人間はいつか父や母となり、そして祖父母になるということ
4.年寄りが家にいれば親は必ずしも必要ではないということ
問( 6 ) ( ⑤ ) に入る最も適当なものはどれか
1.自分達が間違いなく年寄りである2.人間は誰でもいつかしうものだ
3.年寄りを必要としない家族もある4.父親(母親)もまた子供であった
問( 7 ) この文章の内容と合っているものは次のどれか
1.小説家は、人間を単なる<時間>の函数としないために、家族という人間の結びつきを立体的に描かざるを得ない。
2.小説家は、<時間>の重さを表すために、時の不思議な影を垣間見せる年寄りを登場人物に入れなくてはならない。
3.小説家にとって小説の中で家族をいかに描くかということは、<時間>をいかに描くかということでもある。
4.小説家にとって<時間>から解放された小説を書くことは困難だが、挑戦すべき課題である。