妖精:
幸せいはどこか転がっているかわからない、思いがけない幸運は、思っている以上に身の回りで起こっているのかもしれない。予期せぬ幸運をつかむには一つだけ条件がある、どんなに不運を嘆いても、まったく気分が乗らなくてもかまわない。とにかく、その場に参加すること。これこそが幸せの扉を開ける第一歩である。
奇跡の扉を探して続けるんだよ。どうしても運命を変えたい、「どうしても運命を変えたい」、そう願い続けることでしか、奇跡の扉は開かないようにできている。奇跡の扉を開ける鍵は、お前の心の中にしかないんだよ。お前はそれに気づいてないだけだ。
健:
正直、この日のことはよく覚えていない。多田さんの受賞パーティーなのに、悪酔いして礼と多田さんに絡んだことだけはなんとなく覚えている。もうすぐ礼と多田さんが結婚してしまうという事実においつぶされ、酔ってなきゃ口にできないことを二人にぶつけることしかできなかった。
大学を卒業してから、五人がそろうことが難しくなってきたけど、どんなに久しぶりに会っても一瞬にして学生時代に戻れた。でも、こうした時間が、永遠には続かないとわかっていたから、笑うときも喜ぶときも、悔しがるときも、心なしか大げさになっていた。
結婚は二人だけのものではない、両親や兄弟を含めた、家族みんなの幸せの上に成り立っている。過去の自分は、その重みに耐えかねて、酒に逃げる以外の方法は見つからなかった。礼の思いは、結婚という現実に、いとも簡単に押しつぶされた。
これまでの十四年間、礼の横にいるのが当たり前だった。そんな当たり前のことが、もうすぐ叶わなくなってしまう。声を上げて笑いあった日々も、穏やかに流れていく時間も、あんなに怒らせた日々も、あんなにけんかした日々も、もう、手の届かないところに消えてしまう。礼が、世界で一番好きな人が、ほかの男と結婚してしまう。あんなに小さなころに言えた言葉が、年を重ねれば重ねるだけ、口に出せなくなって、思いが募れば募るほど遠くなっていた。あの時交わした約束は、今ここに消えようとしている。
礼:
小学校の頃ね、健が放課後とかに、ペン回しとか、二重跳びとか、一輪車とか、影でこっそり練習してるのを見て、よく笑ったんだよね。そのくせ、すぐ得意になって、「教えてやろうか?」とか言ってくるのがすごいしゃくでさ、負けたくなくて必死にやってたけど、結局あきらめちゃったこといっぱいあるんだよね。私は、いっつもどっかで、自分には無理だなとか思うと、あきらめちゃうとこあったけど、健は、絶対自分から諦めたりはしなかったよね。どんなに時間かかってもずっと校庭に残ってやってたよね。二重跳びのときも、一輪車のときも、ずっと。ほんとう往生際が悪いというかさ、でも、そういうところが好きだったんだよね。
礼のお父さん:
礼、多田さ、ご結婚おめでとう。しかし、私は今でも、こんなに早く結婚する必要がないと思っている。私が結婚するときも、妻の父親に猛烈に反対をされた。ずいぶん、理不尽な人だと思っている。しかし、礼が生まれたとき初めてその、お父さんの気持ちがわかった。この子がやがて誰かの元へ嫁いでいく日が来るのかと思うと、胸がつぶれそうになって困った。娘はずっと昔から手のかからない子供でしてねえ。手間かからない分、かえって心配でね。どこかで無理をしてるんではないか、どこか誰にもわからないところに、自分だけの悲しみを溜め込んでいるのではないか。そんな時、礼はこんなことを言ったんです:「多田さんは、私の弱さをすべて知った上で受け取ってくれたすばらしい人だ。」と。もしかしたら、多田さん、私はあなたに嫉妬していたのかもしれません。23年間ずっと一緒に暮らしてきたのに、私たちにはついぞ見せなかったものをあなたには素直に見せていたんですからね。あの子はね、、、どうか、どうか娘を幸せにしてやってください。よろしくお願いします。
多田さん:
これからのことのほうがずっと大切だと思うんだ。これまでの別々の過去より、これから二人で過ごす時間を、僕は、ずっとずっと大切にしていきたいと思う。
posted @ 2008-08-19 22:57
骄阳1987 阅读(29)
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