第一章 笑顔
「あ~!!超お腹減ったしっ♪♪」
待ちに待った昼休み。
美嘉はいつものように
机の上でお弁当を開く。
学校は面倒。
だけど同じクラスで仲良くなったアヤとユカと一緒にお弁当を食べるのが唯一の楽しみなのだ。
━田原美嘉━
今年の4月高校に入学したばかりの高校一年生。
入学してからまだ
三ヶ月足らず。
仲良しで気の合う友達も出来て結構楽しく過ごしていた。
チビだし
バカだし
特別かわいいってわけでもないし
特技なんてないし
将来の夢なんてあるわけもない。
高校に入ってすぐに染めた明るい茶色のストレート髪[直发]。
ほんのり[微微]と淡いメイク[同メーク,制作]がまだあまり馴染んで[融合]いない今日この頃。
中学校から平凡な生活を送ってきた。
普通に友達もいた。
普通に恋もした。
付き合った人数は三人。
多いのか少ないかなんてわからない。
だけど共通してるのは
どれも短期間で終わりを告げている[宣告]ということ。
本当の恋なんて知らない
知ってるのは遊びの恋
ただ一つだけ。
恋なんて
しなくてもいい。
そんな中…
君に出会った。
このまま平凡に終わるはずだった美嘉の人生は、君に出会ったことによって変わっていく…。
いつものように
美嘉とアヤとユカの三人は
もくもく[不声不响]とお弁当を食べていた。
食事の時って無言になるのはなぜだろう。
その時教室のドアがガラガラと音をたてて開き、
それと同時にポケットに手を入れた一人の男が三人のもとへと
近づいて来た。
その男は三人の前に立ち止まり、
軽い口調で話し始める。
「こんちわ~!俺の名前はノゾム。隣のクラスなんだけど~知ってる?」
目を合わせる三人
しかしそのまま知らんぷり[]をして
お弁当を食べ続ける。
高校に入学してからノゾムの噂をたくさん聞いた。
女ったらし[玩弄女生]。
手が早い[很快和异性拉上关系,马上使用暴力]。
遊び人。
ノゾムは毎日のように違う女を連れて[伴随着]
校内を歩いている。
“ノゾムに気をつけろ!”
“ノゾムに狙われた女は逃げられない”
そんな話を聞いたこともあったっけ…。
高めの身長に
整った[完整]顔。
メッシュが入って [入眼]
ワックス[蜡]で無造作[漫不经心]にセット[做发型]されている髪。
何かを見透かす[看穿]ようにじっと[聚精会神]みつめる[凝视]瞳。
モテる要素を持っているのは確かだ。
問題は性格。
この軽い性格はどうにか[想办法]ならないものか…。
そこまで悪い噂を聞いていながら関わるつもりなどもちろんない。
三人はノゾムの存在に気付かない[没意识到]フリ[不利]をしながら、弁当を食べ続ける。
「あれ~無視?俺と友達になってよ♪番号交換しようぜ!」
あまりのしつこさに喉が渇き、
イライラしながら近くにある麦茶を手に取りごくんと一口飲み込む美嘉。
「えぇ~どうしよ。まぁいいよ!交換しよ♪」
沈黙の中、
突然言葉を発したのはアヤだ。
美嘉とユカはギョッと[大吃一惊]した顔で目を合わせた。
アヤが笑顔でノゾムと
番号交換をしている。
信じ難い光景…。
ノゾムが満足げに教室から出て行くのを確認し、
アヤに問いただした。
「なんであんな軽そうな男に番号教えるの??痛い目見るよ?!」
そんな美嘉の心配をよそにあっさり[轻松]と答えるアヤ。
「だってあたしイケメン大好きだからぁ!ウフッ♪」
アヤは大人っぽくて綺麗な女の子。
スタイルがよくロング[长的]で少しウェーブ[波浪]がかった赤茶色の髪が特徴。
男運が悪く付き合う男は軽い感じの男ばかり…。
だから彼氏が出来ても、付き合ってすぐ別れての繰り返し。
「アヤ、あんな男に本気[认真]になっちゃダメだよ。」
真面目な顔で心配するユカに対し
アヤは軽い返事をした。
「大丈夫だってぇ♪」
学校が終わり、
家に帰って部屋でごろごろ[闲着无聊]しながらテレビを見ていた。
その時…
♪プルルルルル♪
部屋に鳴り響く着信音。
しかも登録してない
知らない番号から…。
誰だろう??
相手を探るよう出る。
『もしもし…??』
『…』
…無言。
『もしも~し??』
少し強気[强硬]で言ってみる。
ガチャッ
プープープー
切られてしまった。
いたずら[恶作剧]電話?
間違い電話かな。
♪プルルルルル♪
再び鳴り響く着信音。
さっきと同じ番号だ。
どうせ[总归]また無言だと思い
どうでもいいような声で電話に出た。
『もしもぉぉぉし』
『…し?もしもーし…』
電話の向こうから微か[微弱]に聞こえる
聞き慣れない男の声。
『へっ?誰??』
電話の向こうの相手は
鼓膜が破れてしまうくらいの大声で答えた。
『…美嘉ちゃん?悪ぃ電波悪くて!ノゾムだけど!わかる?今日の昼休み話かけた奴!』
ゲッッ!ノゾム?
ノゾムってあの女ったらしのノゾム?
今日アヤと連絡先交換してた…あのノゾムさん?
頭の中はパニック[恐慌]状態。
返す言葉が
見つからない[没被找到]。
いっそ[宁可]のこと電話を
切ってしまおうか…。
電話を切ってしまおうとボタンに指を近づけた時
ノゾムは再び[又]話し始めた。
『突然電話したら驚くよな~ごめん。アヤちゃんから番号教えてもらった。友達なって!』
なるほど。
アヤが勝手に教えたんだ。…って納得してる場合じゃなくて!!
明日アヤへの軽い復讐[报仇]を決意しながら
冷静を装って[假装]答えた。
『…で何か用??』
『だーかーらー俺と友達になってよ!ねっ。お願~い』
軽い…軽すぎる。
軽い男は苦手[不好对付]。
『…いいよーじゃあね』
仕方なく友達になることを承諾して
電話を切った
そうしないと電話を切ってくれないような気がした[感觉]から。
ノゾムの番号を登録…
一応[姑且]しておくか。
ジリリルリ
不快な目覚ましの音で目が覚め、
今日もまたいつも通り学校へ向かう。
玄関で上靴[室内穿的鞋]に履き変えていた時
アヤの姿を見つけた。
興奮気味に
アヤのもとへ駆け寄る[跑近]。
「アヤのバカぁ!!勝手に番号教えちゃダメでしょっ。昨日ノゾムから電話来たんだから!!」
「ごめ~ん♪だってノゾムが美嘉の番号教えろってうるさいんだもん。なんかおごる[请客]から許して[饶恕]♪」
何事もなかったようなアヤの横顔を見つめながら
深くため息をついた。
初めて電話で話した日以来、
ノゾムからは毎日のように電話やメールが来る。
当時はまだ
“携帯電話”を持ってる人が少なく
ほとんどの人が
“PHS”を使っていた。
“PHS”には
PメールとPメールDXという機能がある
Pメールとはカタカナを15字前後送ることが出来る機能で、
PメールDXとは今の携帯電話のように長いメールを送ることが出来る機能だ。
重要な内容ではない限り[只要不…就…]PメールDXは使わない。
ほとんど[几乎]はPメールを使用していた。
ノゾムからのメールは
いつも同じ内容。
《ゲンキ?》
《イマナニシテル?》
決まってこの二通。
次第に[慢慢地]返事をするのが面倒になり、
返事をしなくなってしまったうえに [而且]
電話にも出なくなった。
ノゾムは隣のクラス。
廊下でばったり会う事もあるけど…
とにかく避け続けた。
ノゾムはの事が
嫌いなわけじゃない。
ただ面倒くさがりの美嘉にとって
ノゾムの連絡が重かったりもする。
そしてノゾムを狙っていたアヤが美嘉の事を、
“親友の男を平気でとる女“
だと陰口[暗中说坏话]を言っているという噂を
聞いてしまったから。
そんな日が続き、
ようやく高校最初の夏休みが来た。
じめじめした[苦闷]ある日の午後…
中学からの親友であるマナミと美嘉の家で遊んでいた。
夏休みに入って毎日のように遊んでいる。
マナミはどんな悩みでも相談出来る大切な友達。
中学校の時はよく二人で悪いことをしたりもした…
いわゆる“悪友”であったりもする。
この日もくだらない話をしながら盛り上がっていた[气氛热烈]その時…
♪プルルルルル♪
部屋に鳴り響く着信音で二人の会話が途切れた。
「マナミ~ごめん電話出ていい??」
「いいよん♪」
画面を見ると、
知らない番号からだ。
しかもPHSからではなく家の電話から…。
「出ないの?!」
が不思議そうな顔をしながら覗き込む[]マナミ。
「…やめとく。知らない番号とか嫌だしっ!!」
そう答えて電話を切ろうとしたその時、
マナミは美嘉の手からPHSを奪い電話に出た。
『もしも~し?私美嘉の友人です。はい、美嘉ですか?今かわりまーす』
「高校の友達だって。変な人じゃなかったよ!」
マナミは受話器をおさえ[按住]ながら小さな声でそう囁き電話を手渡してきた。
仕方ない。
ここは電話に
出るしかない。
『…もしもし』
『もっし~俺!ノゾム君だよ~ん♪美嘉ちん俺のこと避けるしな~ひでぇな!俺泣いちゃうよ~』
ゲッッ!!
このウザい[]くらいのテンション[紧张]の高さ…。
ノゾムだ。
『何??』
冷たく言い放つ[随便说说]。
『またまたぁ~美嘉ちんは冷たいなぁ!俺何かした?してないよね~!ヒャハハハハ』
酔っているのか
ノゾムの口は止まらない。
『俺PHS止められちゃって~参った[受不了]!今~弘樹って奴の家から電話かけてんだよね!頭良くない?今からそいつ[那个东西]に変わりま~す!』
『え…ちょっと待っ…』
最後まで言い終わらないうちに、
電話の相手が出た。
『もしもし?』
『えっ……もしもし』
ついつい答えてしまう。
『俺ノゾムのダチの桜井弘樹。あいつ今かなり酔ってるみたいでごめんな』
ノゾムとは正反対[完全相反]の、
低く落ち着いた声。
『大丈夫だけど…ってか弘樹君だっけ??家の電話からかけてて大丈夫なの??』
美嘉の問いに弘樹は電話ごしで笑って答えた。
『ヒロでいいから!番号聞いていいか?俺からかけ直す』
そして番号を交換した。これがヒロとの出会いだ
桜井弘樹…
いや、ヒロと番号交換をしたあの日から
毎日連絡を取り合った。
ヒロとは会ったことがないけど話が合う。
電話をして
わかった事。
クラスは遠いけど同じ高校に通っていて、
一度ノゾムと教室まで来たことがあり、
美嘉と話してみたいと思ってくれていたらしい。
二人は暇さえあれば電話やメールをしていた。
夏休みも終わり、
眠い目をこすり[擦]ながら学校へ向かう。
教室に着いた時机の上に置かれていたのは
一通の手紙。
【DEAR美嘉★FROMアヤ】
…アヤからだ。
ノゾムと連絡をとり始めてから
アヤに避けられている。
不安な面持ち[神色]で
手紙を開く。
【話があるから、手紙読んだら四階の音楽室まで来てね!】
手紙を握りしめたまま教室を飛び出し、
階段を四階まで駆け上がった[跑上了]。
音楽室のドアの前で
軽く深呼吸をする。
……怒ってるかな。
嫌な思いが
頭を過ぎる。
そっとドアを開けると
窓側の机に座っていたアヤが振り向いた。
「おはぁ♪」
いつものアヤに
少し戸惑う[不知所措]。
「おはよぉ…」
「呼び出してごめん!」
「ん…」
「美嘉は今恋してる?」
一瞬浮かんだのはヒロの顔。
会ったことがない…
勝手に想像している
ヒロの顔。
「…いないかなぁ」
美嘉の返事を聞き、
すかさず[马上]口を開くアヤ。
「あたし今恋してる!」
…相手はきっとあの人。
「ノゾム??」
「うん!本気[认真]なの。美嘉はノゾムのことどう思ってるの?」
心配そうな顔をするアヤに対し、正直な気持ちを口にした[说了]。
「…ただの友達。恋愛感情は少しもないし!!」
アヤの表情が少し緩む。
アヤは席から立ち上がり
背を向けた。
「あたしね、美嘉に嫉妬してたの。ノゾムは美嘉狙いっぽかったし~美嘉も好きなのかなぁ~…ってね。疑ってごめん。ユカに話したらかなり怒られちゃった!」
「そっかぁ……」
「美嘉ごめんね。許してくれるかな?」
しんみり[沉寂]とした空気の中
アヤが振り向いて
頭を下げる。
答えは一つ。
「……もちろん!!」
夏休み中にヒロという名前の男と知り合い
毎日連絡を取り合っているということをアヤに話すと
アヤは嬉しそうに美嘉の腕に自分の腕を回した。
「そうだったんだぁ。ヒロ君て人どんな人なんだろうね!美嘉、お互い頑張ろうね♪」
一時間目の授業は
移動教室だ。
ずっと心配していたユカに仲直りした[和好]ことを報告し三人は教室を出た。
廊下を歩いていると、
前からはヤンキー[]とギャル[少女]男集団が…。
その中にノゾムがいる。
確かにノゾムは
ギャル男系[]だ。
「ノゾム~♪」
ノゾムのほうに
駆けて行くアヤ。
取り残された美嘉とユカは廊下の隅でアヤが戻って来るのを待つ。
その時集団のうちの一人が二人に近付いて[靠近]来た。
色黒
明るい茶髪
整った細い眉毛
腰パン[]にはだけたワイシャツ
背が高い…おそらく180くらいはあるだろう。
耳にはたくさんのシルバー[银]ピアス[耳环]。
その集団の中では、
あきらかにリーダー[领导人]的存在
その男が鋭い目付き[眼神]でを睨みながら
こっち向かってくる。
美嘉とユカは視線をそらし[转移]逃げる態勢をとった。
二人の前に立ちはだかった[叉开两脚站着,挡住别人去路]その男は口を開いた。
「美嘉…だよな。俺は弘樹。」
…弘樹?ヒロ??
ギエェェ!!
夏休み中ずっと連絡とってたヒロ?
低くて落ち着いた声。
想像してたヒロは、
爽やかで大人っぽくて…
「よろしくな!」
ヒロは見た目から想像できないような子供みたいにあどけない[天真的]笑顔で
右手を差し出した[伸出]。
引きつった[僵硬]作り笑顔でじんわり[慢慢冒出]汗ばんだ右手を差し出し、
ヒロの右手を軽く握る美嘉。
隣では彼氏いない歴16年の純情なユカが、
黄色いゴム[膠]で後ろに束ねられた黒髪をプルプル[发抖]と震わせながら今にも[眼看]失神しそうな顔をしている。
美嘉でさえ怖いのに、
ユカには刺激が
強すぎたか…。
キーンコーンカーンコーン