第三章 傷み
日曜の夕方
これから
ヒロと遊ぶ予定。
用意が早くできたので、ヒロの家に向かうため
予定より一本早いバスに乗った。
案の定バス停に
ヒロの姿はない。
ヒロを驚かせよう…
そう思い歩いてヒロの家へと向かおうと近道を通り、
人通りが少ない薄暗い道を歩いていたその時…
背後にいた車のドアが開き、
誰が走って来る音が聞こえた。
ボコッッ
鈍い音と同時に頭に激痛が走る。
視界が真っ白になった
もうろう[模糊不清]とした意識の中無理矢理[强迫]腕を引っ張られ
スモーク[烟]がかった白いワゴン[小型货车]車に連れ込まれる[被带进]。
…頭がくらくらする[头晕的样子]
…痛い…何コレ?
手足を強い力でおさえ[按住]、
洋服を乱暴に剥ぎ取る
見覚え[认识]のない四人の男。
…レイプ[强奸]。
これはレイプだ。
恐怖の中…
レイプされているという事実だけは把握出来る。
「…やっ・・・」
自然と出る叫び声。
一人の男に口を塞がれた
「てめー[]静かにしねぇと生きて帰さねぇぞ」
男は不気味[令人害怕]に
微笑んでいる。
…目は笑っていない。
笑みを浮かべながら顔や腹を
ひたすら[只顾]殴り続ける。
その時
♪プルルルルル
車内に響く着信音。
この着信音は…
ヒロだ。
遅いから心配して
電話くれたんだ。
電話に出て
ヒロに助けを求めたい。
しかし二人の男が手足をおさえている[按住]ため
身動きが出来ない。
着信音は
悲しく鳴り響いていた。
抵抗したら
もっと殴られる。
殺されるかも…
恐怖と悲しみの中、
唇を噛み締め[咬住]
じっと耐える。
ヒロと初めて一つになった日…
あんなに優しく抱いてくれたのに。
何で今さら思い出してんだろ。
…涙が止まらない。
突然ピカッ光る眩しい光。
助けが
来てくれた…??
そんな淡い期待さえ
すぐに砕かれてしまった。[破碎了]
ニヤニヤし[冷笑]ながら
耳元で呟く[小声说]男。
「てめぇチクっ[]たらわかってるよな?今撮ってる写真ばらまく[散布」からな」
体が身震いする[颤抖]。
さっきの光は
助けなんかじゃない。
カメラの
フラッシュ[闪光]だったんだ。
「こんなんでいいだろ」
男達は笑いながら意味深な言葉を発し、
その言葉を合図に
車が動き始めた。
車は10分くらい走り、
知らない場所で車から捨てるように降ろされ、
…途方に暮れていた。[]
震える指で
走り去る車のナンバーをPHSにメモする。
暗い場所が怖い。
明るい場所に行きたい…
明かりを求めて近くのコンビニへと歩き始めた。
でも…
ボロボロ[衣服破烂不堪]に破れて
血のついた洋服。
殴られて腫れた顔。
とてもじゃないけど
人前に出れるような姿ではない。
足を止めコンビニの裏にある白いベンチに
横たわった。[]
ずっと鳴っているヒロからの電話。
今すぐヒロの声が
聞きたい。
『今どこ?』
『……わかんない』
『わかんないってどうしたんだよ!泣いてんのか?美嘉今どこにいんの?言えよ』
『どっかのコンビニの裏…』
『近くになにある?』
『パチンコ[弹钢球]屋がある…』
『今行くから』
電話は一方的[单方面的]に
切られてしまった。
ベンチに横になりながら星を見る。
ヒロに
嫌われちゃうのかな…。
目を閉じてヒロの温もり[温暖]を思い出そうとしても
今はさっきの出来事が鮮明に甦って来るだけ。
それから
しばらく経ち…
キキーッ
自転車のブレーキ[制动器]音。
起き上がる[爬起来]と
少し遠くにはボロボロの美嘉を見て驚いているヒロの姿が
ぼんやり見えた。
ヒロは自転車を投げ捨て[扔掉]
美嘉のもとへ駆け寄り[靠近]
強い力で抱きしめた。
ヒロが来てくれた安心感からか…
子供みたいに声を出して泣きわめく[号哭]美嘉。
「守ってやれなくてごめん…」
ヒロの怒りと悲しみが
体にひしひし[紧紧地]と伝わる。
ヒロの存在に安心した気持ちと
ヒロに申し訳ない気持ちが混ざり合い
頭の中はぐちゃぐちゃ[乱七八糟]だ
ヒロは悪くない。
汚れちゃったよ。
ヒロ…
美嘉汚れちゃった。
ヒロの胸の中で一時間くらい泣き続けていた。
「…落ち着いたか?」
「うん……」顔を上げる。
真っ直ぐ前を見つめ[凝视]ているヒロ。
その表情は悔しげで…。
「俺んち行くぞ。このまま帰せねぇから」
「うん…美嘉のいる場所よくわかったね…」
「俺の愛の力かもな!」
フフッと笑うヒロの笑顔の裏に
悲しさが隠れ見える。
わかってるよ。
無理…してるよね。
ヒロは詳しく聞いてはこなかった。
でも何があったかきっとわかってる。
自転車に乗り、ヒロの家に到着。
「部屋入って待ってて」
「おじゃまします…」
小声で呟き
ヒロの部屋にちょこんと[拘谨地坐着]座り込んだ[坐下不动]。
混乱している頭を抱え、呆然としていると…
「美嘉ちゃん!」
背後から名前を呼ぶ声に体がビクッと[吓一跳]し、
恐る恐る後ろを振り向いた。
「…エリさん」
エリさんとはヒロのお姉さんの名前。
ヒロよりも四つ上で、
レディースの番長[女学生的头儿]をしているらしい。
最初会った時はかなり怖かったけれど、
ヒロの家に遊びに来るたび仲良くなって今じゃ悩みを聞いてもらったり、メールや電話で連絡をとったりする仲だ。
美嘉にとってもお姉ちゃん的存在。
「びっくりさせてごめんね。弘樹から聞いた。辛かったね。あたしも似たような経験あるし、女同士のほうが話しやすいよね?」
言葉を返すことが出来ない。
「あ、無理して話さなくてもいいよ。いつか話せるようになったら話して?そいつの特徴とか、車の種類とか。あたしも昔それで犯人見つけ出したからさ。美嘉ちゃん傷つけた犯人、あたしと弘樹で必ず見つけ出してあげっから!」
エリさんの言葉を信じ、
目をギュッと[紧紧地]閉じてPHSを手に取り
詳しく説明をした。
「白いスモーク[烟]がかったワゴン[运货车]車に、ナンバーは183*。四人の男で10代か20代…一人は前歯[门牙]がかけてたような……」
エリさんに傷を手当[对付的办法]してもらい、
ヒロに自転車で家まで送ってもらった。
二人の間に会話はない。
でも今ね…
感謝の気持ちでいっぱいなんだ。
どこかもわからない場所を捜しあて[找到]てくれて
自転車を投げ捨て[扔掉]て走って抱きしめてくれた。
ヒロが
安心をくれたんだよ。
ヒロの背中に強くしがみつき[紧紧地搂住]、
大好きだと…
実感していた。
家の前に到着し、
ヒロが差し出し[伸出]てくれた手につかまり[抓住]
自転車から降りる。
「ありがと…じゃあまた明日ね…」
下を向いて帰ろうと背中を向けたその時…
「…待てよ」
美嘉の手を握り
引き止める[挽留]ヒロ。
終わりを予感させる。
…そんな雰囲気。
もうヒロとは
ダメなのかな。
終わりかな。
「…ごめんね」
自然に出た言葉。
ヒロは美嘉の肩を両手でぐいっと[使劲儿]掴んだ[抓住]。
「謝ってんじゃねぇよ。俺美嘉と終わらせる気ねぇから。こんなことって言ったら言い方悪いけど、まだ好きな気持ち変わってないから。これからは俺が美嘉を絶対守るし、今日のことなんて忘れさせてやっから。犯人捜すから」
涙が溢れた。
今度は嬉し涙だった。
ヒロありがとう。
ただいまも言わず部屋に直行[径直去]し、
布団に潜り込ん[钻入]だ。
眠れるわけがない。
目を閉じるとあの光景が甦る[重新浮现]から。
結局一睡もしないまま
朝を迎えた。
「…いってきます」
転んだと嘘をつき、
目と口の横にバンソウコウ[橡皮膏]を貼り玄関を出る。
玄関の前には
ヒロが立っている。
「え…どうしたの?こんな朝早くに…」
「迎えにきたんだよ!」
「え…なんで??」
「いいから早く乗れ」
ヒロはおでこ[额头]に軽くキスをすると、
体を持ち上げて
後ろに乗せた。
「掴まってろ!」
ヒロから美嘉の家までは自転車で一時間以上はかかる距離だ。
ただでさえ学校だから早く起きなきゃならないのに…ヒロ何時に起きたの??
心配してくれたんだ。
優しいね…。
学校へ行くと
アヤとユカは顔の傷を見て
目を見開いた[睁开眼睛]。
「どうしたの?!」
声を揃える[齐声]二人。
「転んだの!!」
「美嘉ドジなんだから、気をつけなよ!」
「は~い♪」
アヤの心配をよそに[]
明るくふるまう。
ヒロはそれから毎日学校から家までの往復を送り迎えしてくれた。
少しずつ
心の傷が消えていく…。
あの事件以来、
ヒロは気を使っている[用心,顾虑]のかキスしかしてこない。
それも
ほっぺ[脸颊]やおでこに…。
確かにまだ
少し怖い気持ちはある。
ヒロの優しい気持ちは
すごく嬉しいよ。
だけどね…
ちょっと寂しい。
いろんな男に回されたから
“美嘉の体は汚い”
そう思ってるのかなって不安になるよ。
勇気を出して、
ヒロの家で遊んでいる時聞いてみることにした。
「ねぇ~ヒロはしたいとか思わないの??」
唐突でかつ大胆な質問。
「何を?」
「……エッチ!!」
飲んでいたお茶を
吹き出す[喷出]ヒロ。
「は?いきなり何!」
「…まじめな話だもん」
「…そりゃあしてぇけど美嘉がしたいって思える日まで待つ」
「したい気持ちはあるんだ。怖いけど…でもヒロが美嘉の体を汚いと思ってできないのかなぁって不安なの」
ヒロは美嘉の頭を
自分の胸へと引き寄せた[拉到身边]
「ばーか!お前俺がそんな男だと思ってたの?」
美嘉をベッドまで運び、体をそっと[轻轻地]倒す。
「怖くなったら言えよ?無理すんな。俺が美嘉の嫌な事全部忘れさせてやるから。傷消してやるから安心しろ」
二人の唇が近づき、
体がビクッとする。
「大丈夫…俺だから」
ヒロはゆっくり時間をかけて抱いてくれた。
そう初めての時よりも…。
「俺が一生美嘉を守る」
その言葉が
今の美嘉の傷薬なんだ。
あの日の傷みは、
ヒロによって
消されていく…。
夜になり
家まで送ってもらった。
「またねっ!!」
玄関のドアに手をかける。
「美嘉!」
名前を呼ばれた声で
振り返った。
ヒロは美嘉の唇に軽くキスをすると
「じゃあな!」
と叫び再び自転車に乗って帰って行った。
家に帰り
ベッドの上にあるぬいぐるみ[布制玩偶]を握りしめる[紧紧抓住]。
ヒロありがとう。
美嘉ね…
あの日のこと忘れられそうだよ。
いつの間にかうとうとしていた時…
♪プルルルルル♪
着信:ヒロ
ヒロからの電話で
目が覚めた。
この電話によって
衝撃[精神的打击]の事実が判明する[弄清楚]。
『あい…』
寝ぼけた[发呆]まま
電話を取る。
『…犯人見つかった』
『ふぇ…犯人…?』
『お前をレイプ[强奸]した犯人見つかった!』
興奮気味なヒロの声に、ガバッと体を起こした。
『え…マジで??』
『おぅ、マジ。姉貴と姉貴のダチに協力してもらって見つかった。美嘉が車のナンバー見たからそれが決め手で!』
『マ…ジかぁ』
犯人が見つかった。
喜んでいいのだろうか。
その時
ある事実を思い出した。
…写真。
『ヒロ…写真とられた!!チクッたらばらまく[散布]って言われたよ…』
慌てた美嘉の言葉に、
興奮気味だったヒロは静かになり、
いつもよりさらに低い声で答えた。
『はぁ?マジかよ。マジぶっ[]殺す。俺が写真奪ってやるから。明日会えるか?』
『うん…』
『明日朝行くから』
そうして電話は切れた。
犯人見つかった…。
電話を握りしめたまま、震え[颤抖]が止まらなかった。
一睡もしないまま朝が来る。
学校をサボり、
迎えに来てくれたヒロの自転車に乗ってヒロの家へと向かった。
「おじゃまします…」
「美嘉ちゃんいらっしゃい!」
…エリさんだ。
「犯人見つかったよ。今からそいつらここに呼ぶけど…大丈夫?やっぱ最低なことをして傷つけられたわけだし、ケジメ[辨别]つけさせたいから」
何も言わずに
深く頷く美嘉。
これから
…犯人に会うんだ。
犯人に会うの、
本当は少し怖い。
でも反省して欲しい。
二度と同じことを繰り返してはほしくないから。
ヒロと手を握り合い
部屋でじっと待つ。
「俺がいるから大丈夫」
ヒロは美嘉を安心させるため
何度も優しく声をかけてくれた。
その時…
玄関のドアが開く激しい音と共に、
エリさんとエリさんの友達らしき人の叫ぶような声。
「てめぇらタラタラ[喋喋不休地]してんじゃねーよ。早く謝れよコラァ」
こっちへ向かう足音が
徐々に近付いて来る。
…犯人が来る。
ヒロの手を折れるくらい強く握った。
キイィ
部屋のドアが開き、
ぞろぞろと人が入って来る。
体は一瞬にして硬直[僵硬]…
鳥肌[鸡皮疙瘩]がたつ。
間違いない。
…確かにあの四人。
顔ぶれ[成员]も、
車の香水とタバコが混ざったきついにおいも…。
あの日の記憶が甦る[重新浮现]。
ヒロが手をぎゅっと握り返したことで、
記憶を取り戻した[恢复]。
「こいつら?」
エリさんの質問に
何度も頷く。
その瞬間ヒロがものすごい剣幕[气势汹汹]で立ち上がり、
一人の男を睨み胸倉[前襟]をつかんで叫んだ。
「てめぇが犯人か!てめぇ俺の女って知っててやったのか?」
え…
ヒロは何言ってるの??
「はぁ?弘樹の知り合い?意味わかんねぇ。説明してくんねぇ?」
眉間にシワを寄せるエリさん。
「こいつ俺の知り合い」
ヒロは胸元[胸口]を掴んだ男を強く睨みながら答えた。
「なんで弘樹の知り合いが美嘉ちゃんをレイプしたんだよ?」
「俺にもわかんねーよ。てめぇ説明しろやコラ」
胸倉を掴まれている男が怯えた[胆怯]表情で口を開いた
「咲さんに頼まれた…」
………咲さんに頼まれた??
「咲って弘樹の元カノだよな?」
エリさんはしかめっつら[皱眉头]で問う。
「咲がなんだよ。てめぇ詳しく言えよ」
ヒロの怒鳴り声に再び男が口を開いた。
「咲さんに“嫌いな女いるからその女レイプして写真撮ったら金やる”って言われて…」
この時その言葉を理解することが出来なかった。
ヒロはその男の顔を
拳で強く殴り、
その男は口から血を流し倒れた。
横に並んでいた三人の男が謝る。
「許して下さ…」
「聞こえねぇ」
ヒロはの三人とも壁に押さえ付け[按住]て順番に殴り、無理矢理土下座させて頭を踏みつける[用力踩住]。
全員が謝り終えるとエリさんは四人の男を
家の外に出した。
「弘樹説明しな」部屋に戻り
ヒロを睨むエリさん。
「でも…ヒロ彼女と別れたんだよね??」
美嘉は苦笑いをしながらヒロの顔を覗き込んだが
ヒロは何も答えようとはしなかった。
「嘘ついてたのか?」エリさんの表情は
さらに曇る。
「俺は別れようって言ったんだ…でもあいつが嫌だって言うんだよ。」
うつむく[低头]ヒロを見つめ[注视]ながら一つの疑問が頭に浮かんだ。
「美嘉ヒロの元カノに会ったことないよね?なんで元カノ美嘉の顔知ってるの??」
顔を上げ美嘉の目を見つめながら答えるヒロ。
「実は美嘉と付き合い初めてから一回咲と会った。
っつーか家の前にいたんだ。
そん時美嘉のプリクラ[大头贴]くれたら諦めるって言われたから一枚やったんだよな…ごめん」
「おめぇ、謝って許される事じゃねーよ」
壁を蹴るエリさん。
ヒロは美嘉に頭を下げた
「ごめんな…」
その時重大なことを思い出し、
美嘉はヒロのそでをつかんだ。
「写真…撮られた写真奪ってない…」
美嘉のそんな姿を見て、エリさんは冷静に答えた。
「大丈夫。あいつらに聞いたら、フィルムいれてなかったって言ってたから安心して!」
「咲だっけ?そいつとは縁切り[断绝关系]な」
エリさんがイライラした様子で言うと、
ヒロは再び頭を下げた。
「マジでごめんな。俺のせいで…」
「うん…大丈夫」
その日もヒロに自転車で送ってもらい、
家へ帰った。
家へ帰ってから何回も何回も
ヒロからメールが届いていた。
《ミカ、ゴメンナ》
美嘉をレイプした犯人はヒロの知り合いだったなんて。
しかも
元カノに頼まれて…。
犯人が誰かも判明したし謝ってもらうことも出来た。
だけど、
スッキリしないのはなぜだろう。
写真は?
フィルムは本当に入ってなかったの?
だってフラッシュ[闪光]光ったんだよ…??
ヒロはなんで元カノに会ったことを秘密にしてたの??
美嘉がクラスの男と話するだけで
怒るくせに。
ヒロの元カノに嫌われてるの??
ねぇ
これって本当に解決したのかな。
本当にこのまま終わるのかな…。
ヒロの元カノが男友達に頼んで美嘉をレイプした
何それ…
どうして平気で人を傷つけられるの??
治りかけていた傷が
再び痛み始める。
この傷は
きっと…
一生跡が残るだろう。
网摘收藏posted on 2008-12-29 16:28
静儿 阅读(32)
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