日本語能力試験1級合格者には
上海通訳試験における受験生の問題(二)
前回は敬語や授受関係の表現の間違いが多いことについて分析しました。そのほかに目立った問題は、受身形の間違い、アスペクトの間違いでした。以上の間違いはいずれも明らかに文法力が弱いことによるものです。受身形の使い方は日中双方でかなりの相違があるので、十分に理解する必要があり、把握するまでに大量の対訳の練習が要ります。
今回取り上げるのは、4)外国語を聞き取る能力が弱いことです。その主な原因には次のことが挙げられます。
a)音声言語を認識することが遅い
b)2カ国語の対応練習が足りない
c)音読の練習が足りない
d)一定時間内で処理できる分量が少ない
e)ボキャブラリーが不足している
言語は音声言語と文字言語があります。文字言語の場合は視覚で認識するので、漢字に強い中国の学生にとっては読むことは難しいことではありません。しかし、通常通訳には、スピーチをする人の話を聴いて理解する必要があり、耳で捉える音声を意味のあるものとして認識しなければなりません。
しかし、これまでの日本語能力を測定する試験では、文法や読解、語彙や文字など所謂文字言語を重んじてきました。従って、日本語学習者は試験に合格するために音読や2カ国語の対訳、広範な閲覧など疎かにし、音声言語の練習よりも文字言語の勉強に偏ってしまいがちです。ですから、音声言語を認識するのが当然遅くなり、通常いわれているヒアリング能力が弱いという結果になります。
聞き取れないという問題を解決するためには、ナチュラルスピードで発話された日本語を聞いて理解できないレベルなのか、ところどころ聞き取れないところがあるのか、によって対処方法は全く違ってきます。
ヒアリングはリーディングと同様に、理解できるレベルより速くなるにしたがって聞き取りに困難を感じるようになり、あるレベルを超えてしまうと全く処理できなくなる可能性もあります、ですから、内容が理解できることを前提に音読の速度を向上することが大事だと思います。
ボキャブラリーの面でも同じで、聞き取れない、分らない語句や表現が現れたら、パニックになるひとがいますが、いくら勉強しても、たとえプロでも、意味のよく分らない単語や表現に出会うことは必ずあります、いくら耳を磨いても、すべて完全に、また一度聞いただけで聞き取れるとも限りません。ナチュラルなスピードの話でも、聞き取れない部分があったり、意味の分らない語句に遭遇することはごく普通の現象なので、特に問題視する必要はないと思います。
これはヒアリング能力とかボキャブラリーの問題ではなく、むしろ通訳者としてどう対処するかという問題解決能力、そして訳文処理技術の範疇に属する問題だと思います。聴解力の向上の助けとなる日本語力以外の能力を磨くが大事でしょう。例えば、意識的に言葉の知識を増やすとか、常に予想しながら聞くとか、ノートテイキングの際に自己流の記号や略語などを利用して記述方法を早める、といったことも考えられます。
その他、聴解力の問題は、情報の入力スピードの外の語彙力の有無が大きく影響します。それ以外にも、様々な音声学上の問題とも係わっています。例えば、日頃の母国語でのコミュニケーションにおいて、私たちは無意識のうちに相手の発話の強弱、抑揚、あるいはリズムやポーズなど様々なプロソディー信号を頼りに文の構造や意味の切れ目を判断し内容を理解します。場合によっては、相手の表情やボディーランゲージなども内容を理解する重要な要素にもなります。
母語は通常無意識のうちに身につけているわけですが、外国語の習得ともなると、母語干渉がもっとも強く起る分野であるので、かなり意識的に学習しないと身につくことができません。通訳は専ら音声言語を対象にした作業なので、通訳者は発された言葉そのものの意味のほか、こうした各種のプロソディー信号を的確に感知し、その意味を汲み取る能力を備える必要があります。
通訳というのは高度に複雑な知的作業であるため、単に語学に堪能であればいいというわけではありません。何といっても起点言語を理解することから始まるのです。いい換えれば、聴解力によって起点言語のメッセージを確実に捉え、それを分析、整理できなければ、何も始まらないのです。
posted @ 2011-01-05 11:29
王建明 阅读(93) |
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