和尚
さんは猫のこうまんらしく述べ立てる口上を、にこにこして聞きながら、
「うん、うん、それはお前の言うとおりだとも。だからねずみの言うことは取り上げずに帰してやったのだから、安心おしなさい。」
と言いました。
そこで猫はすっかりとくいになって、尾をふり立てながら、みんなが首を長くして待っている所へ行って、
「みなさん、大丈夫、和尚さんは承知してくれました。」
と言いました。
するとみんなは口々に「万歳、万歳。これで安心だ。」
と言って、手をつなぎ合って、猫じゃ猫じゃを踊りました。
するとまたこの話を聞いたねずみ仲間では、
「猫のやつが和尚さんの所へ頼みに行ったそうだ。」
「和尚さんは猫に、ねずみの言うことは決して取り上げないと約束をなさったそうだ。」
「何でも猫は天竺の虎の子孫で、人間のために世界中の悪い獣を退治するんだといばっていたそうだ。」
てんでん、こんなことを口々にわいわい言いながら、またお寺の縁の下で会議を開きました。けれどもべつだん変わったいい知恵も出ません。
「もうこの上和尚さんに頼んでみたところで、とてもむだだから、今夜みんなでそろって和尚さんの所へ行くことはよそう。そして夜の明けないうちに、いよいよ都落ちをして、田舎へ行くことにしよう。」
こうまん 高慢べつだん
【別段】 另外,特别
(副)
特記すべき事が有ることを表わす。
みやこおち【都落ち】【都落】从城市搬往农村
―する
(一)都に居られなくなって、地方へ逃げて行くこと。
(二)今まで住んでいた都会を去って、地方へ移り住むこと。
だれが言い出すともなく、年を取ったねずみたちの間にはこの話がまとまって、みんなはあわてて夜逃げのしたくにかかりました。
するとまた元気のいい若ねずみたちが、くやしがって、
「まあ待って下さい。われわれはただの一度も戦争らしい戦争をしないで、むざむざ都を敵に明け渡して田舎へ逃げるというのは、いかにもふがいない話ではありませんか。それでは命だけはぶじに助かっても、この後長く獣仲間の笑われものになって、まんぞくなつきあいもできなくなります。そんなはずかしい目にあうよりも、のるか、そるか、ここでいちばん死にもの狂いに猫と戦って、うまく勝てば、もうこれからは世の中に何もこわいものはない、天井裏だろうが、台所だろうが、壁の隅だろうが、天下はれてわれわれの領分になるし、負けたら潔くまくらを並べて死ぬばかりです。」
と言って、またくやしそうにきいきい歯ぎしりをしました。
その勢いがあんまり勇ましかったものですから、逃げ腰になっていた外のねずみたちも、ついうかうかつり込まれて、
「そうだ、それがいい、それがいい。」
「なあに、猫なんかちっともこわくないぞ。」
とこんどは急に力み返りながら、いよいよ戦争のしたくにとりかかりました。
すると猫の方でもすばやくそれを聞きつけて、
「何を、ねずみのくせに生意気なやつだ。」
「よし、残らずかかって来い。一ぺんにみんな食い殺してやるから。」
と急に爪をとぐやら、牙をこするやら、負けずに戦争のしたくをして、
「おもしろい。おもしろい。ねずみのやつ、早く寄せて来ればいい。」
と待ちかまえていました。
むざむざ 轻易地,轻率地
(副)
―とそれに対処する方法をなんら講じないで、自分にとって不結果を招くことを表わす。
「―〔=惜しげも無く〕手放すことはない/―〔=あっさり〕と計略にかかる」
あけわたす【明け渡す】【明渡す】让出,腾出
(他五)
住みなれた家・部屋・城などから立ちのいて、他人へ渡す。〔所有権の譲渡を意味する〕
[名]明渡し[0]
ふがいない 不中用,没出息
(形)
歯がゆいほど意気地が無い。
のるかそるか【伸るか反るか】 是成是败
〔「伸る」は、長く伸びる意〕結果はどうなるか分からないが、とにかく思い切ってやってみよう、という時に使う語。
[表記]俗に、「乗るか反るか」とも書く
しにものぐるい【死に物狂い】【死物狂】拼死
必死になって△奮闘する(あばれる)こと。
きいきい 嘎吱嘎吱
はぎしり 咬牙
にげごし【逃げ腰】【逃腰】 想要逃脱
(責任などをのがれて)逃げ出しそうな△かっこう(態度)。
「―になる」
うか‐うか
1.心が落ちつかないさま。不安なさま。
2. 周囲に気を配らず油断のあるさま。また、しっかりした考えや計画がないさま。うっかり。
つり‐こ・む【釣り込む】引诱
他五__
甘言を用い、また、興味を起させて、引き入れる
とぐ 【研ぐ·磨ぐ】 磨
文章引用自:http://www.aozora.gr.jp/cards/000329/files/18380_12099.html
posted on 2008-09-01 15:00
雨苗 阅读(5)
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